こんにちは。大阪府箕面市の「リユニス訪問看護ステーション」代表の濱崎です。

【もしもの時の選択】シリーズ第3弾となる本日は、「食べる」喜びと「誤嚥(ごえん)」のリアル、そして飲み込む力が落ちた後に迫られる決断について、前編・後編に分けてお話しします。

今回は前編として、「経管栄養(胃や腸を使う方法)」について解説いたします。

🍽️ 「食べる」ことの本当の意味

私たちにとって「食べる」ことは、命を維持するための「栄養補給」であると同時に、季節を感じ、家族と食卓を囲む人生の「最大の楽しみ(生きる喜び)」でもあります。

しかし、ご高齢になったり病気の後遺症などで飲み込む力(嚥下機能)が落ちると、この当たり前の日常が脅かされることになります。

⚠️ 飲み込む力が落ちる「誤嚥(ごえん)」の恐怖

食べ物や飲み物が、誤って食道ではなく「気管」に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言います。

これは、むせて苦しい思いをするだけでなく、最悪の場合は「窒息」を引き起こす、命に関わる非常に危険な状態です。

🦠 怖いのは食事中だけじゃない「誤嚥性肺炎」

誤嚥によって口の中の細菌が肺に入り込むと、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を引き起こします。実はこの肺炎、後期高齢者の死亡原因の上位を占める恐ろしい病気です。

特に現場で怖いと感じるのが、夜間など「気が付かない間に自分の唾液を誤嚥しているケース(不顕性誤嚥:ふけんせいごえん)」です。「食事中にむせていないから大丈夫」と思っていても、知らない間に肺炎を引き起こしていることが多々あります。

🏥 肺炎後に迫られる「大きな決断」

飲み込む力が落ち、誤嚥によって肺炎を起こしてしまった場合。病院で治療を受け一命を取り留めたとしても、ご家族にはその後に「大きな決断」が待っています。

それは、今後の「栄養を取る方法(食べる事)」をどうするか?という問題です。

医療現場で提案される方法は、大きく分けて以下の2つです。

① 経管栄養(胃腸を使う)

② 点滴(血管を使う)

今回は、「① 経管栄養(胃腸を使う方法)」の代表的な2つの選択肢と、現場のリアルをお伝えします。

💡 ① 経管栄養(胃・腸を使う方法)の選択肢とリアル

まず、経管栄養(経鼻経管・胃ろう)に共通する最大のメリットは、「胃や腸といった消化管を使うため、本来の自然な働きに近い形(生理的)で栄養を吸収できる」という点です。血管から直接栄養を入れる点滴と比べ、腸内環境や体の免疫機能を保ちやすいという特徴があります。

その上で、それぞれの方法のメリット・デメリットを見ていきましょう。

方法メリットデメリット・現場のリアル
経鼻経管栄養
(鼻から胃へ管を通す)
・手術不要で、ベッドサイドですぐに始められる。
・胃腸を使うため、生理的で自然な栄養吸収ができる。
挿入時や挿入中も、鼻や喉の不快感が非常に強い
ご本人が無意識に抜いてしまうリスクが高く、危険を避けるためやむを得ず「ミトン(手袋のような抑制帯)」を手に装着しなければならないことも少なくない。
入れ替えの際、医師による処置やレントゲンでの位置確認が必要な場合がある。
胃ろう
(お腹に直接穴を開ける)
・喉や鼻がフリーになるため不快感が少ない。
・口を使わないため、並行して「食べるリハビリ」がしやすい。
・胃腸を使うため、生理的で自然な栄養吸収ができる。
お腹に穴を開ける「手術」が必要。
お体の状態や胃の構造によっては、そもそも手術が行えない場合がある。

「お腹に穴を開ける(胃ろう)なんて可哀想だから、鼻からの管で…」と希望されるご家族は多いです。しかし、鼻からの管は不快感が強く、自己抜去を防ぐために「手をベッドに縛る(ミトンをつける)」という、ご本人やご家族にとってさらに辛い現実が待っていることもあります。

一方で胃ろうは、手術の必要はありますが、喉がフリーになるため「もう一度口から食べるための嚥下リハビリ」に専念できるという前向きなメリットもあります。
ただし、決してすぐに!や簡単に!行える処置ではありません。

どちらの選択肢も、命をつなぐための素晴らしい技術です。しかし、肺炎で入院し、ご家族が動揺している中でこれらのメリット・デメリットを比較し、決断するのは本当に過酷です。

いざという時に迷わないよう、元気なうちに「もしもの時はどうしたいかを書き記しておくことがご本人とご家族を守ります。

そんな思いに応えるため、リユニスのではお力になれるサービスをご用意しています。

急性期や慢性期などの病院の最前線で培った経験で、皆様の「自分らしい物語」を紡ぐお手伝いを全力でさせていただきます。お一人で悩まず、ぜひリユニスにご相談ください。

次回は、後編【もしもの時の選択③-2】「②点滴(血管を使う方法)」のリアルについてお話しします。